院長ブログ
マウスピース矯正で出っ歯は治らない?治療効果や費用・症例などを紹介
「マウスピース矯正 出っ歯」と検索される方の多くは、「目立たず出っ歯を治したい」「本当に効果があるのか不安」と感じているのではないでしょうか。
ワイヤー矯正に比べて手軽に始められるマウスピース矯正ですが、出っ歯のような前方への歯の突出にどこまで対応できるのか、気になる点も多いはずです。
この記事では、マウスピース矯正による出っ歯治療ができるのか?や費用、症例などを詳しく解説します。
結論、出っ歯で。
- マウスピース矯正で出っ歯は治せる
- 部分矯正なら1年程度・全体矯正なら3年程度
- マウスピース矯正で出っ歯を治すなら30~70万円の費用が相場
医師(歯科医)・岸上歯科クリニック 院長
岸上 拓央
大阪歯科大学卒業卒業。複数歯科クリニックを経て、岸上歯科クリニックを開業。所属団体『口腔インプラント学会』『東京SJCD会員』。 詳しくはドクター紹介
【結論】マウスピース矯正で出っ歯は治る!
出っ歯はマウスピース矯正でも十分に治療可能です。
前歯の軽度な突出や、歯並びの乱れが原因であれば、透明で目立たないマウスピースによる矯正でしっかりと改善が可能です。
従来は難しいとされていたケースも、近年では技術の進歩により対応できる範囲が広がっています。
ただし、骨格に原因がある重度の出っ歯にはワイヤー矯正や外科的処置が必要なこともあるため、歯科医師による診断を受けたうえで、自分に合った方法を選ぶようにしましょう。
マウスピース矯正で出っ歯を治す際の治療費
マウスピース矯正で出っ歯を治療する際の費用は、治療の範囲や使用する装置、治療期間によって異なります。
全体矯正を行う場合はおおよそ80万円〜100万円前後が相場で、部分矯正で済む軽度の症例であれば30万円〜60万円程度に収まるケースもあります。
費用の目安 | |
---|---|
ワイヤー矯正 | 50~100万円 |
マウスピース矯正(インビザライン) | 70~120万円 |
裏側矯正 | 100~150万円 |
保険適用外の自由診療で費用は全額自己負担となりますが、多くのクリニックでは分割払いやデンタルローンに対応しているため、まとまった費用を用意できない方でも治療を始めやすい点が特徴です。
また、治療費には診断料・通院ごとの調整費・保定装置代などが別途かかることもあるため、事前に総額を確認しましょう。
マウスピース矯正の出っ歯治療の期間
マウスピース矯正で出っ歯を治す際の治療期間は、症状の程度や矯正の範囲によって大きく異なります。
ここでは部分矯正と全体矯正それぞれの期間の目安を紹介します。
部分矯正の場合:~1年
軽度の出っ歯で前歯だけを対象とする部分矯正であれば、治療期間はおおよそ3か月〜12か月ほどが目安です。
前歯数本のみを動かすケースでは比較的短期間で治療が完了することも多く、日常生活への影響も最小限に抑えられます。
ただし、歯の動きには個人差があり、予定より長引くこともあるため、事前の精密な診断と計画が重要です。
また、部分矯正であっても治療後は保定期間が必要となり、矯正後の歯並びを維持するためにリテーナーの装着が求められます。
全体矯正の場合:~3年
中度〜重度の出っ歯や噛み合わせのズレを伴うケースでは、全体矯正が必要となり、治療期間は1年半〜3年程度が一般的です。
歯列全体を段階的に整えるため、部分矯正と比較して時間を要しますが、その分見た目だけでなく機能面までしっかりと改善できます。
治療期間中は1〜2週間ごとにマウスピースを交換し、歯の動きを少しずつ進めていきます。
長期間にわたる治療だからこそ、継続的なモチベーション維持と適切な自己管理が成功の鍵です。
マウスピース矯正で出っ歯を治す際の注意点
マウスピース矯正で出っ歯を治す際には、治療が簡単に進むと思い込まず、あらかじめ注意すべき点を理解しておくことが重要です。
ここでは代表的な注意点を解説します。
矯正期間や効果には個人差が大きい
マウスピース矯正による出っ歯治療は、見た目が自然で取り外しができるというメリットがある反面、歯の動きやすさには個人差があります。
年齢や骨格、歯の状態、歯ぐきの健康など、さまざまな要因が影響するため、同じような症状でも治療期間や効果が異なるケースは少なくありません。
さらに、日常的な装着時間の管理や自己管理の徹底が求められ、サボると予定通りに進まないこともあります。
理想的な結果を得るためには、継続的に指示を守り、疑問点があれば都度担当医に相談してください。
予定より治療期間が長引く可能性がある
マウスピース矯正は、計画通りに進めば治療期間が明確に見通せる一方で、実際には期間が延びることもあります。
例えば、装着時間が1日20時間以上※確保できなかったり、食事や歯磨きのたびにマウスピースを外したまま長時間放置するなど、患者の生活スタイルや装着状況によって進行にズレが生じやすくなります。
また、歯の動きが想定よりも鈍い場合や、治療途中で追加アライナーが必要になることもあり、結果として予定より数か月〜半年以上長引いてしまうことも多いです。
スムーズな治療を目指すためには、計画的な生活と自己管理が欠かせません。
※参照元|昭和医科大学歯科病院
十分な効果が得られない可能性がある
マウスピース矯正は軽度〜中度の出っ歯に適している一方で、歯の移動量が多い場合や顎の骨格に問題があるケースでは、十分な矯正効果を得られないことがあります。
特に、重度の上顎前突や骨格性の出っ歯の場合は、ワイヤー矯正や外科的処置の併用が必要となる可能性も否定できません。
また、自己判断でマウスピースの装着を怠ったり、指示通りのスケジュールで取り替えを行わなかった場合も、効果が出づらくなります。
治療開始前にしっかりと診断を受け、自分の症状にマウスピース矯正が適しているかを確認しましょう。
出っ歯になる4つの原因とは?
出っ歯は見た目の問題だけでなく、噛み合わせや発音にも影響します。
ではなぜ出っ歯になるのでしょうか?
ここでは代表的な4つの原因について解説します。
出っ歯になる原因1:遺伝
出っ歯の原因としてまず挙げられるのが遺伝です。
顎の大きさや形、歯の並び方は遺伝の影響を受けやすく、家族の誰かが出っ歯の場合、同じような歯並びになる可能性が高くなります。
また、骨格的に上顎が前方に出ている場合や、下顎が小さいといった構造も遺伝的に受け継がれることがあります。
このような骨格的要因による出っ歯は、マウスピース矯正などでは改善が難しく、ワイヤー矯正や外科的な治療が必要になる場合も多いです。
まずは専門医による正確な診断を受けましょう。
出っ歯になる原因2:口周りの癖
指しゃぶりや舌で前歯を押す癖、口呼吸などの習慣は、出っ歯を引き起こす大きな要因です。
乳歯の時期に長期間続く指しゃぶりは、前歯を前方へと押し出す力が働くため、永久歯が生えてきたときに前に傾く原因になります。
また、舌の位置が常に前方にある「舌突出癖」や、鼻づまりなどによる口呼吸も、顎の正常な発達を妨げ、歯並びを悪化させます。
これらの癖は日常生活の中で無意識に続けてしまうため、早期に気づき、専門的な指導やトレーニングで改善することを意識しましょう。
出っ歯になる原因3:歯の大きさやバランス
歯のサイズが顎の大きさに対して大きすぎる場合、歯が並びきらず、前方に突出してしまうことで出っ歯になります。
また、逆に顎が小さすぎる場合も、同様に歯がスペース不足で押し出されることがあります。
歯と顎のバランスの不一致も、出っ歯の原因の一つです。
日本人は顎が小さめの傾向があるため、歯並びに影響が出やすいとされています。
マウスピース矯正では、こうした軽度~中程度のバランスのズレによる出っ歯に効果が期待できるため、治療の対象となることが多いです。
出っ歯になる原因4:親知らずの生え方
親知らずが奥で横向きに生えたり、まっすぐに生えてこない場合、前方の歯列に圧力がかかり、前歯が押し出されて出っ歯になることがあります。
下の親知らずが正しい位置に生えてこないケースでは、下顎の歯が前に押され、噛み合わせが崩れて上の前歯が突出するという連鎖が起こることもあります。
親知らずの影響で歯列が乱れてきたと感じたら、早めに歯科でレントゲン検査を受けましょう。
必要に応じて親知らずの抜歯と矯正治療を併用すると、歯列の改善が期待できます。
マウスピース矯正では治すのが難しい出っ歯の例
マウスピース矯正は目立ちにくく、取り外しができるメリットがある一方、適応が難しいケースも存在します。
ここでは、マウスピース矯正では治療が困難な出っ歯の代表例を紹介します。
重度の上顎前突
上顎前突とは、上の前歯や上顎全体が下顎に対して前に大きく突き出している状態を指します。
重度のケースでは、マウスピース矯正だけでの治療は難しいです。
なぜなら、マウスピースによる矯正は少しずつ歯を動かすことで歯列を整える治療方法であり、大きく前に出ている歯を後ろに下げるには、歯を動かすスペースや歯を支える骨の状態にも大きく左右されるからです。
重度の上顎前突は、ワイヤー矯正や外科的処置を併用する必要があることも少なくありません。
見た目の改善だけでなく、噛み合わせや口元のバランスを考慮した総合的な治療計画が求められます。
骨格性の問題
出っ歯の原因が「骨格性」である場合、つまり上顎と下顎の骨格に著しいズレや不均衡がある場合は、マウスピース矯正のみでは十分な改善が期待できないことがあります。
骨格性の不正咬合では、歯の位置だけでなく顎の骨の位置自体を変える必要があるため、骨格の成長が完了した成人であれば、外科的な矯正手術(外科矯正)を視野に入れる必要があります。
また、顎の骨の成長期にある場合は成長の方向を誘導する治療が必要となり、マウスピースでは対応できないケースが多いです。
犬歯が後ろを向いている
犬歯は口の中で特に根が深く、移動が難しい歯の一つです。
犬歯が本来あるべき位置から大きく外れており、しかも内側や後ろを向いている場合、マウスピース矯正ではその移動が難しいことがあります。
マウスピースは歯の移動を段階的に行うため、複雑な回転や大きな距離の移動が必要な犬歯の位置矯正には限界があるのです。
犬歯が後ろを向いている場合は、ワイヤー矯正で精密に歯を動かしたり、必要に応じて補助装置を用いたりする治療方法が適しています。
マウスピース矯正を検討する際は、犬歯の位置をしっかりと確認し、歯科医師の診断を受けましょう。
顎の成長期にある子ども
子どもはまだ顎の骨格が成長途中にあるため、出っ歯の原因が骨格性である場合、その成長過程に応じた矯正治療が必要です。
マウスピース矯正は基本的に大人向けに設計されているため、成長期の骨の変化に対応するには不十分なことがあります。
上顎の前方への過成長や、下顎の成長不足による出っ歯は、骨の成長をコントロールする装置(拡大床やヘッドギアなど)を用いる矯正治療が適しています。
また、子どもはマウスピースを決められた時間きちんと装着できるかという点でも課題があり、治療効果が不安定になる可能性もあるため、慎重な判断が必要です。
出っ歯を放置することで起こるリスク3つ
出っ歯は見た目の問題だけではなく、健康や生活の質にも影響を与える可能性があります。
結論、出っ歯を放置すると以下の3つのリスクがあります。
出っ歯を放置するリスク1:前歯の怪我
出っ歯の状態が続くと、日常生活の中で前歯に外的な衝撃を受けやすくなります。
例えば転倒したときや、スポーツ中に顔をぶつけた場合、他の歯よりも前に出ている前歯が最初に衝撃を受けてしまいます。
そのため、歯が欠けたり折れたりするリスクが高まるのです。
また、口が閉じにくいために唇で歯を保護しづらく、口内を切ってしまうこともあります。
前歯は審美的にも重要な部分なので、怪我による欠損や損傷が精神的なダメージにつながることも少なくありません。
矯正治療によって歯並びを整えると、重大な怪我を未然に防げます。
出っ歯を放置するリスク2:むし歯・歯周病のリスク
出っ歯の状態では、歯と歯の間に隙間ができやすく、また歯磨きが行き届きにくくなります。
その結果、歯垢が溜まりやすくなり、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
特に前歯が重なっていたり、角度が極端に傾いていると、ブラッシングだけで汚れを完全に落とすことが困難です。
また、出っ歯によって噛み合わせのバランスが悪くなると、特定の歯に負荷が集中し、歯周組織に過剰な負担がかかってしまいます。
これが歯周病の進行を早める原因になることもあります。
口腔内の健康を保つためにも、歯並びの改善は重要な予防策です。
出っ歯を放置するリスク3:風邪やインフルエンザなどの感染症
出っ歯により口がしっかり閉じられない状態が続くと、口呼吸が習慣化しやすくなります。
口呼吸は鼻呼吸と比べて外部からのウイルスや細菌の侵入を防ぎにくく、喉が乾燥することで免疫機能も低下します。
その結果、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。
特に冬場は空気の乾燥と相まって、口呼吸による喉の乾燥が顕著になり、体調を崩しやすいです。
出っ歯を矯正して自然に口を閉じられるようになると、口呼吸を防ぎ、呼吸器系の健康維持にもつながります。
マウスピース矯正で出っ歯を治す際のよくある質問
最後に、マウスピース矯正で出っ歯を治す際のよくある質問に回答します。
次の質問に回答していきますので、参考にしてください。
出っ歯は何センチから出っ歯と診断されますか?
一般的に出っ歯(上顎前突)と診断されるのは、上の前歯が下の前歯よりも4mm以上前方に突出している状態とされています。
軽度の出っ歯は4~6mm程度で、奥歯のかみ合わせに問題ない場合が多いです。
軽度の出っ歯は、抜糸をせずにマウスピース矯正やワイヤー矯正など、歯の傾きや位置を調整する矯正治療が行われます。
一方、重度の出っ歯は骨格が原因で起こる場合があり、6mm以上になることもあります。
インビザラインで出っ歯を治すのに何年かかる?
インビザラインによる出っ歯の治療期間は症状の程度によって異なりますが、軽度〜中等度の場合は約1年〜2年程度で改善が見込まれます。
また、治療中にマウスピースを装着する時間や頻度、定期的な検診や調整なども影響します。
ただし、重度の出っ歯や骨格的な問題を伴う場合は、2〜3年かかることもあり、場合によってはワイヤー矯正との併用が必要です。
日々の装着時間(推奨20時間以上)を守ることが、治療期間を短縮する鍵となります。
マウスピース矯正とワイヤー矯正、どちらがいいですか?
マウスピース矯正とワイヤー矯正にはそれぞれメリットがあります。
マウスピース矯正は目立たず取り外し可能で衛生的ですが、重度の症状には対応しにくい場合があります。
一方、ワイヤー矯正は適応範囲が広く、複雑な歯列や骨格的問題にも対応可能です。
治療の見た目やライフスタイルを重視するか、確実な効果を優先するかで選択が分かれます。
医師と相談のうえ、症状に合った方法を選ぶことが大切です。
マウスピース矯正で出っ歯になった?原因は?
マウスピース矯正後に出っ歯のような見た目になることがありますが、その多くは治療途中で起こる一時的な状態です。
歯を移動させる過程で前歯が一時的に前方に出ることがあるほか、装着時間の不足やアライナーの誤使用も原因になりえます。
また、適切な診断なしに矯正を進めると、かえって噛み合わせが悪化するケースもあります。
違和感がある場合は、早めに歯科医へ相談しましょう。
マウスピース矯正は出っ歯を治す際の適した有効な手段の一つ
マウスピース矯正は、軽度から中等度の出っ歯に対して高い治療効果が期待できる方法です。
見た目に配慮しながら矯正を進められる点や、取り外し可能な利便性は大きな魅力と言えます。
重度の症例には適さないこともあるため、まずは歯科医院でしっかりと診断を受けることが大切です。
自分に合った方法を選び、理想の口元を手に入れましょう。